この3月26日の朝日新聞。「米国の研究チームによると、交尾する気のないメスに無視されたオスは、アルコール入りの餌を好んで食べたという。交尾できたオスに比べて、満足した時に脳内で増す神経伝達物質の量が少なく、欲求不満を「酒」で埋め合わせていたらしい。」
蝿もやけ酒を飲むのかな?ぼくの経験にでは、面白くない、憂鬱なとき、何らかの精神的なバランスを崩しているときに飲む酒はろくな結果をもたらさない。酔いざめ気分は面白くなく、二日酔に悩まされたりするし、まずだいいちに、こんなときに飲む酒はうまくないのだ。
酒は上機嫌のとき、うれしいとき、可笑しいときに飲むほうが良い結末を迎えられることが非常に多い。事実そういう科学的実験結果もあるようだ。同じ天声人語のコラムに、「一時の酔いが頭から追い払った「嫌な記憶」は、より重くなって心の底に刻まれる。(ネズミの実験)やけ酒はストレス解消どころか逆効果」であるということだ。基本的には、めでたい酒の方が、そうでない酒よりは、よほどこの神の恵み享受できそうだ。
とはいえ、どんな状態にあろうと毎日酒のボトルに手はのびる。精神の状態が良いにつけ悪いにつけ、何かと理由をつけて酒を飲む。若かったころのように、明るいうちから欲しいと思うことはなくなったが、それは寄る年並からくる体力の衰えのせいだろう。
睡眠導入の役割もしているわけだから、これは立派なアルコール依存症であるともいえるのだが。
「いまさらいうまでもないことですが、人間には‶ないものねだり〝という欲望があります。この欲望はたいへんつよいものです。とりわけ男にはこの欲望がつよい。・・・・『自分以外のものになりたい』
コレです。男がお酒を飲みたがるのも。」(『開口一番 お酒を呑みます』開高健)
そうかな、そんな風に思ってグラスを傾けることあまりないのですが。
「・・・・なぜこうも自分以外のものになりたいか。
いわずと知れたことです。自分に満足できないからです。ハッキリしています。およそ生れてから死ぬまで人間は一日として自分に満足する瞬間がないのです。・・・‶ないものねだり〝こそは地球をブンブンまわしているのであります。地球最後の日、それは最後の男がないものねだりをしなくなった日であろうと思われるのであります。」
そうやね、自分に満足できた日ってのは一度もないな、そう云われてみると。
「かくて、われらは今夜も地球のために飲む。・・・その香り、その味。甘き、辛き。撫でるがごとく、ブンなぐるがごとく、そしてその翌朝の悲惨さよ。そしてそして、その夕方のふたたびとりあげるグラスによどむ永劫回帰の真理よ!」
と開口先生も、何とか理由をつけて酒を飲んでおられたようだ。なぜ酒を飲むのか、なんてのはぼくにとっては永遠、わかりまへん!!